旧学習指導要領「倫理」の抜粋 平成10年版

旧学習指導要領「倫理」の抜粋

平成10年版


1 目   標
人間尊重の精神に基づいて,青年期における自己形成と人間としての在り方生き方について理解と思索を深めさせるとともに,人格の形成に努める実践的意欲を高め,生きる主体としての自己の確立を促し,良識ある公民として必要な能力と態度を育てる。

2 内   容
(1) 青年期の課題と人間としての在り方生き方
自己の生きる課題とのかかわりにおいて,青年期の意義と課題を理解させるとともに,先哲の基本的な考え方を手掛かりとして,人間の存在や価値について思索を深めさせる。
ア 青年期の課題と自己形成
自らの体験や悩みを振り返ることを通して,青年期の意義と課題を理解させ,豊かな自己形成に向けて,他者と共に生きる自己の生き方について考えさせる。
イ 人間としての自覚
人生における哲学,宗教,芸術のもつ意義などについて理解させ,人間の存在や価値にかかわる基本的な課題を探究させることを通して,人間としての在り方生き方について考えを深めさせる。
ウ 国際社会に生きる日本人としての自覚
日本人にみられる人間観,自然観,宗教観などの特質について,我が国の風土や伝統,外来思想の受容に触れながら,自己とのかかわりにおいて理解させ,国際社会に生きる主体性のある日本人としての在り方生き方について自覚を深めさせる。
(2) 現代と倫理
現代に生きる人間の倫理的な課題について思索を深めさせ,自己の生き方の確立を促すとともに,よりよい国家・社会を形成し,国際社会に主体的に貢献しようとする人間としての在り方生き方について自覚を深めさせる。
ア 現代の特質と倫理的課題
現代の倫理的課題を大局的にとらえさせ,今日に生きる人間の課題について理解させる。
イ 現代に生きる人間の倫理
人間の尊厳と生命への畏敬,自然や科学技術と人間とのかかわり,民主社会における人間の在り方,社会参加と奉仕,自己実現と幸福などについて,倫理的な見方や考え方を身に付けさせ,他者と共に生きる自己の生き方にかかわる課題として考えを深めさせる。
ウ 現代の諸課題と倫理
生命,環境,家族・地域社会,情報社会,世界の様々な文化の理解,人類の福祉のそれぞれにおける倫理的課題を,自己の課題とつなげて追究させ,現代に生きる人間としての在り方生き方について自覚を深めさせる。

3 内容の取扱い
(1) 内容の全体にわたって,次の事項に配慮するものとする。
ア 中学校社会科及び道徳並びに公民科に属する他の科目,地理歴史科及び特別活動などとの関連を図るとともに,全体としてのまとまりを工夫し,特定の事項だけに偏らないようにすること。
イ 先哲の基本的な考え方を取り上げるに当たっては,内容と関連が深く生徒の発達や学習段階に適した代表的な先哲の言説等を精選し,細かな事柄や高度な事項・事柄には深入りしないこと。また,生徒自らが人生観,世界観を確立するための手掛かりを得させるよう様々な工夫を行うこと。
ウ 政治及び宗教に関する事項の取扱いについては,教育基本法第8条及び第9条の規定に基づき,適切に行うこと。
(2) 内容の取扱いに当たっては,次の事項に配慮するものとする。
ア 内容の(1)については,次の事項に留意すること。
(ア) アについては,この科目の導入としての性格をもつものであることに留意し,生徒自身の課題とかかわらせて考えさせ,以後の学習への意欲を喚起すること。
(イ) イについては,ギリシアの思想,キリスト教,仏教,儒教などの基本的な考え方を代表する先哲の思想,芸術家とその作品を,観点を明確にして取り上げるなど工夫すること。
(ウ) ウについては,古来の日本人の考え方や代表的な日本の先哲の思想を手掛かりにして,自己の課題として学習させること。
イ 内容の(2)については,次の事項に留意すること。
(ア) アについては,イ及びウへの導入として,現代の倫理的課題について概観し,問題意識をもたせる程度にとどめること。
(イ) イについては,倫理的な見方や考え方を身に付けさせ,自己の課題として考えを深めていく主体的な学習への意欲を喚起すること。
(ウ) ウについては,イの学習を基礎として,学校や生徒の実態等に応じて課題を選択し,主体的に追究する学習を行うよう工夫すること。その際,生命又は環境のいずれか,家族・地域社会又は情報社会のいずれか,世界の様々な文化の理解又は人類の福祉のいずれかにおける倫理的課題をそれぞれ選択するものとする。

 

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