現行学習指導要領「倫理」の抜粋
平成20年版
第2 倫 理
1 目 標
人間尊重の精神と生命に対する畏敬の念に基づいて,青年期における自己形成と人間として い の在り方生き方について理解と思索を深めさせるとともに,人格の形成に努める実践的意欲を 高め,他者と共に生きる主体としての自己の確立を促し,良識ある公民として必要な能力と態 度を育てる。
2 内 容
(1) 現代に生きる自己の課題
自らの体験や悩みを振り返ることを通して,青年期の意義と課題を理解させ,豊かな自己 形成に向けて,他者と共に生きる自己の生き方について考えさせるとともに,自己の生き方 が現代の倫理的課題と結び付いていることをとらえさせる。
(2) 人間としての在り方生き方
自己の生きる課題とのかかわりにおいて,先哲の基本的な考え方を手掛かりとして,人間 の存在や価値について思索を深めさせる。
ア 人間としての自覚
人生における哲学,宗教,芸術のもつ意義などについて理解させ,人間の存在や価値に かかわる基本的な課題について思索させることを通して,人間としての在り方生き方につ いて考えを深めさせる。
イ 国際社会に生きる日本人としての自覚
日本人にみられる人間観,自然観,宗教観などの特質について,我が国の風土や伝統, 外来思想の受容に触れながら,自己とのかかわりにおいて理解させ,国際社会に生きる主 体性のある日本人としての在り方生き方について自覚を深めさせる。
(3) 現代と倫理
現代に生きる人間の倫理的課題について思索を深めさせ,自己の生き方の確立を促すとと もに,よりよい国家・社会を形成し,国際社会に主体的に貢献しようとする人間としての在 り方生き方について自覚を深めさせる。
ア 現代に生きる人間の倫理
人間の尊厳と生命への畏敬,自然や科学技術と人間とのかかわり,民主社会における人 い 間の在り方,社会参加と奉仕,自己実現と幸福などについて,倫理的な見方や考え方を身 に付けさせ,他者と共に生きる自己の生き方にかかわる課題として考えを深めさせる。
イ 現代の諸課題と倫理
生命,環境,家族,地域社会,情報社会,文化と宗教,国際平和と人類の福祉などにお ける倫理的課題を自己の課題とつなげて探究する活動を通して,論理的思考力や表現力を 身に付けさせるとともに,現代に生きる人間としての在り方生き方について自覚を深めさ せる。
3 内容の取扱い
(1) 内容の全体にわたって,次の事項に配慮するものとする。
ア 中学校社会科及び道徳並びに公民科に属する他の科目,地理歴史科,家庭科,情報科及 び特別活動などとの関連を図るとともに,全体としてのまとまりを工夫し,特定の事項だ けに偏らないようにすること。
イ 先哲の基本的な考え方を取り上げるに当たっては,内容と関連が深く生徒の発達や学習 段階に適した代表的な先哲の言説等を精選すること。また,生徒自らが人生観,世界観を 確立するための手掛かりを得させるよう様々な工夫を行うこと。
(2) 内容の取扱いに当たっては,次の事項に配慮するものとする。
ア 内容の(1)については,この科目の導入として位置付け,生徒自身の課題を他者,集団 や社会,生命や自然などとのかかわりを視点として考えさせ,以後の学習への意欲を喚起すること。
イ 内容の(2)については,次の事項に留意すること。
(ア) アについては,ギリシアの思想,キリスト教,イスラム教,仏教,儒教などの基本的 な考え方を代表する先哲の思想,芸術家とその作品を,倫理的な観点を明確にして取り 上げるなど工夫すること。
(イ) イについては,古来の日本人の考え方や代表的な日本の先哲の思想を手掛かりにして, 自己の課題として学習させること。
ウ 内容の(3)については,次の事項に留意すること。
(ア) アについては,倫理的な見方や考え方を身に付けさせ,自己の課題として考えを深め ていく主体的な学習への意欲を喚起すること。
(イ) イについては,アの学習を基礎として,学校や生徒の実態等に応じて課題を選択し, 主体的に探究する学習を行うよう工夫すること。その際,イに示された倫理的課題が相 互に関連していることを踏まえて,学習が効果的に展開するよう留意するとともに,論 述したり討論したりするなどの活動を通して,自己の確立を促すよう留意すること。