旧学習指導要領「倫理・社会」の抜粋 昭和35年版

旧学習指導要領「倫理・社会」の抜粋

昭和35年版


第1 倫理・社会
1 目標
(1)人間尊重の精神に基づいて、人間や社会のあり方について思索させ、自主的な人格の確立を目ざし、民主的で平和的な国家や社会の形成者としての資質を養う。
(2)人間の心理や行動を社会や文化との関連において理解させるとともに、青年期における身近な問題を通して、人間としての自覚を深める。
(3)人生観・世界観の確立に資するために、先哲の人間や社会に対する基本的な考え方を理解させ、これをみずからの問題に結びつけて考察する能力と態度を養う。
(4)現代社会について科学的、合理的に理解させるとともに、そこにおける人間関係のあり方について考えさせ、人間や社会や文化の問題について、これを建設的に解決していこうとする態度とそれに必要な能力を養う。
2 内容
以下に示す「倫理・社会」の内容は、2単位を標準とし、全日制の課程にあっては第2学年、定時制の課程にあってはこれに相応する学年において履修させることを前提として作成したものである。
(1)人間性の理解
人間のあり方についての理解と自覚を得させるための基礎として、人間性と青年期に関する諸問題を取り扱い、人生観・世界観への関心をもたせる。
人問と文化
人間と生活や行動の様式としての文化との関係を基礎として、人間存在について考えさせる。
人問形成の条件
行動の機制にもふれ、人格の発達について主として社会的、心理的な観点から考えさせる。
青年期の問題
自我の発達を中心として、青年期における心理的、社会的諸問題を取り扱い、人生における青年期の意義について考えさせる。
(2)人生観・世界観
先哲の考え方について、その時代的背景との結びつきにもふれながらこれを取り扱い、また、現代思想のおもなものについて考えさせ、どのように現代社会に生きるべきかを自主的に考えていこうとする意欲を高める。
西洋の考え方
西洋思想の源流(ギリシアの思想、キリスト教の考え方などを取り扱う。)
近代の思想(人間の尊重、合理的・実証的精神、市民社会の倫理などの観点から取り上げる。)
東洋の考え方
東洋思想(たとえば、仏教、儒学など)の基本的な考え方を取り扱う。
日本の考え方
日本の古来の考え方や、外来思想を受容し発展させたものを取り上げて、日本的なものの考え方について考えさせる。
現代の思想
上記の三つの考え方と関連させながら、現代の思想(たとえば、社会主義、プラグマチズム、実存主義、その他)のおもないくつかを取り扱い、自主的、批判的な思考力を養う。
なお、「(2)人生観・世界観」の場合、たとえば幸福、人間の尊重、個と全体、自由と平等、正義と平和など、適当な主題を取り上げて、上記の事項を学習させることも考えられる。
(3)現代社会と人間関係
現代社会を客観的に理解させるとともに、そこにおける人間関係のあり方について考えさせ、民主主義の倫理をおのおのの集団生活において具体的に実践することが、われわれの課題であることを理解させる。
現代社会と文化
社会集団の構造と機能(社会集団の類型や社会規範を含めて取り扱う。)
現代社会の特質と文化(中間層の拡大、組織の巨大化、マスコミュニケーションなど、大衆社会の諸問題を含めて取り扱う。)
社会集団における人間関係
家族(家族法にもふれ、家族関係のあり方を考えさせる。)
地域社会・職域社会(人間関係の改善や職業の倫理を含めて取り扱う。)
国家と国際社会(国民としての自覚や人類愛の精神を含めて取り扱う。)
民主社会と民主主義の倫理
民主社会をささえている精神(たとえば、人格の尊厳と個性の尊重、自由と平等、社会的連帯性、公共の福祉など)を理解させるとともに、倫理と政治や経済との密接な関連にもふれる。

3 指導計画作成および指導上の留意事項
(1)中学校「社会」および「道徳」の指導の成果を活用するとともに、高等学校「社会」の他の科目との関連にじゅうぶん留意する。また、「保健体育」の「保健」その他の高等学校の他の教科・科目などとの関連にも留意する。
中学校「社会」の政治・経済・社会的分野の内容とのむだな重複を避け、また、それと同じ事項を取り扱う場合にも、より広い視野に立って、程度を深めて考察させる。
中学校「道徳」の内容に関連する事項を取り扱う場合にも、理論的考察に重点をおき、さらに高等学校ホームルームにおける指導とも関連させて、自己形成の必要なことを認識させ、倫理的関心を高める。
「倫理・社会」の学習は、「政治・経済」の学習と密接な関連をもつことによって、より具体化されるものであることに留意して指導する。
(2)内容に掲げた事項の組織・配列は、そのまま指導の順序やまとまりを示すものではない。各学校においては、教科および科目の目標に基づいて、各事項のまとめ方や順序をくふうし、適切な指導計画を作成することが望ましい。また、特定の事項だけに片寄ることなく、内容の全般にわたって指導する。
(3)各事項の指導にあたっては、社会や文化や人間の見方には異なったものがあることを考慮するとともに、広い視野に立って、人間のあり方についての総合的理解を得させることができるように留意する。
(4)各事項の指導にあたっては、それが民主主義の倫理についての理解と実践につらなるものであることに留意する。
(5)「(2)人世観・世界観」の指導においては、東西の先哲の著作や言行の一部などを取り上げることも考えながら、具体的に理解させるように指導する。
(6)「西洋の考え方」の指導については、たとえばソクラテス・プラトン、ロック、ルソー、カント、へ一ゲル、ジョン=スチュアート=ミル、マルクス、ダーウィンなど、西洋の先哲の思想を適宜選んで、その基本的な考え方を理解させる。なお、「キリスト教の考え方」では、たとえば聖書によって、その基本的な考え方を理解させるとともに、近代の思想との関連にも気づかせる。
「東洋の考え方」の指導については、たとえば仏陀、孔・孟子、老・荘など、東洋の先哲の思想を適宜選んで、その基本的な考え方を理解させる。
「日本の考え方」の指導については、日本の代表的な宗教思想家や学者などを適宜選んで、その基本的な考え方を理解させる。
(7)「現代の思想」のうち、社会主義には考え方や立場の異なったものがあるので、指導にあたっては、これらの相違についても理解させる。
(8)「(3)現代社会と人問関係」の指導にあたっては、できれば、その内容に即して、社会科学の研究方法(たとえば、数量的取り扱いなど)にもふれさせることが望ましい。
(9)政治および宗教に関する事項の取り扱いについては、教育基本法第8条および第9条の規定に基づき、適切に行なうよう特に慎重な配慮をしなげればならない。
(10)生徒の手記や作文などの利用、年鑑、新聞などの資料や統計の検討・利用、討議、読書、社会調査、見学などを適宜実施することにより、学習効果をあげるように努める。また、教材として適切なスライド、放送、映画などを精選して、これらを効果的に活用することが望ましい。

 

You must be logged in to post a comment.

Proudly powered by WordPress   Premium Style Theme by www.gopiplus.com